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Web3 Play-to-Earn(P2E)ブロックチェーンゲーム(Axie型)

knowledge/cases/2022-web3-p2e-blockchain-game-axie.md

frontmatter

このファイルの構造化フィールド

model name
Web3 Play-to-Earn(P2E)ブロックチェーンゲーム(Axie型)
origin country
ベトナム
origin year
2021
origin players
Sky Mavis (Axie Infinity)
japan entry year
2022
time lag years
1
japan players
HashPort/HashGames/HashPalette (ELF Masters 先行・日本初BCG) MZ CLUB(前澤友作 ギルド動員) Find Satoshi Lab (STEPN Move-to-Earn派生で市場を牽引)
domain
other
sub domain
Web3ブロックチェーンゲーム(GameFi / Play-to-Earn / X-to-Earn)
era
2020-2025
delay factors
規制 資本 インフラ 需要成熟
outcome
failed
entry barrier
capital-heavy
confidence
confirmed
verified
adversarial-20260716
sources
https://en.wikipedia.org/wiki/Axie_Infinity https://fortune.com/2022/05/04/axie-infinity-sky-mavis-vietnam-crypto-blockchain-startups/ https://www.ibtimes.com/life-changing-or-scam-axie-infinity-helps-philippines-poor-earn-3400241 https://restofworld.org/2022/axie-infinity-hack/ https://blockworks.com/news/axie-infinity-active-users-nft-prices-continue-to-decline-after-bridge-reopening https://www.coindesk.com/tech/2022/02/08/axie-infinity-reduces-slp-emissions-to-prevent-collapse https://www.coindesk.com/markets/2026/04/23/more-than-90-of-web3-games-failed-after-usd15-billion-boom-as-gamers-never-showed-up-caladan https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000046288.html https://www.4gamer.net/games/654/G065467/20220916112/ https://gamebiz.jp/news/342488 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000056303.html https://game-news.tokyo/news/403310 https://news.blockchaingame.jp/2157 https://gamebiz.jp/news/372520 https://bittimes.net/news/139732.html https://web3.gamebusiness.jp/article/2024/10/03/729.html https://www.aoi-sns.com/entry/2024/04/29/201152 https://innovationlaw.jp/blockchain-games-under-japanese-laws-3/ https://diamond.jp/crypto/gamefi/stepn/

本文

## 概要(何のモデルか) Play-to-Earn(P2E)は、プレイヤーがゲームをプレイすることでNFT化されたキャラクターやアイテム、およびゲーム内トークン(暗号資産)を獲得し、それを外部の取引所やマーケットプレイスで現金化できるブロックチェーンゲームのモデルである。代表格はベトナムのSky Mavisが2018年に開発した「Axie Infinity」で、プレイヤーは「Axie」と呼ばれるNFTモンスターを購入・育成し、対戦や繁殖で得たトークン(SLP)やNFTを売却して収益化する[出典: https://en.wikipedia.org/wiki/Axie_Infinity]。 このモデルがマス市場として本格化したのは2021年である。新型コロナウイルス下の雇用悪化を背景に、フィリピン・ベトナムなど新興国でAxieが「本業より稼げる副業」として爆発的に普及し、2021年のデイリーアクティブユーザーは平均250万人超(うちフィリピンが4割超)、同年の売上高は13億ドルに達した[出典: https://fortune.com/2022/05/04/axie-infinity-sky-mavis-vietnam-crypto-blockchain-startups/][出典: https://www.ibtimes.com/life-changing-or-scam-axie-infinity-helps-philippines-poor-earn-3400241]。資金調達面でもSky Mavisは2021年5月にMark CubanやAlexis Ohanianらから約750万ドルのシリーズA、同年10月にa16z主導で約1億5200万ドルのシリーズBを獲得しており、2021年が「モデルが世界的な投資・ユーザー流入を得て立ち上がった年」と言える。 構造上の本質は、①NFT購入という高額な初期投資が参加の前提になっていること、②新規参入者が支払う資金が既存プレイヤーへの報酬原資になる、ゼロサムに近い自己循環型トークン経済であること、の2点である。この構造が、後述する崩壊の直接原因になる。 ## 日本上陸の経緯(誰が・いつ・どう持ち込んだか) 日本市場が動いた転換点は2022年である。ただし「最初の1社」と「市場を動かした年」は同一年内でも役割が異なるため両方を明記する。 - **先行者(プロダクト)**: HashPort傘下のブロックチェーンゲームスタジオ「HashGames」(運営はHashPalette)が、2022年3月にホワイトペーパーを発表し[出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000032.000046288.html]、同年9月16日に「ELF Masters」を正式リリースした。これは日本初のPC・スマホ向けP2E型ブロックチェーンゲームと位置づけられている[出典: https://www.4gamer.net/games/654/G065467/20220916112/][出典: https://gamebiz.jp/news/342488]。ガス代のかからない独自ブロックチェーン「Palette」を採用し、Ethereumのガス代という参入障壁を下げる設計だった。 - **市場の転換点(認知・投資の集中)**: 同じ2022年に、①ZOZO創業者・前澤友作氏が2022年6月に設立したWeb3ギルド「MZ CLUB」が、9月にELF Mastersの公式ギルドとしてパートナーシップを結び「Play to Earnを日本にも広めていきたい」と表明したこと[出典: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000056303.html][出典: https://game-news.tokyo/news/403310]、②Move-to-Earn型のSTEPNが2022年前半に日本でも大きなブームとなり、4月にはASICSとのコラボNFTスニーカーに応募が殺到するなど、X-to-Earn全般への注目が国内で一気に高まったこと[出典: https://diamond.jp/crypto/gamefi/stepn/]、の2つが重なった。 したがって、「最初の1社」と「市場が動いた年」はいずれも2022年で一致するため、japan_entry_yearは2022年を採用する。origin_year(2021年)からのtime_lag_yearsは1年と、他の海外発モデルの日本上陸事例と比べて極めて短い。これは、Web3という新規性の高い技術トレンドが国境を越えてSNS・暗号資産コミュニティ経由でほぼリアルタイムに伝播したためと考えられる。 ## なぜ遅れたか(delay_factors の根拠) タイムラグ自体は1年と短いが、日本国内での「本格的な大企業参入」はさらに遅れており、これが結果的に構造的な弱さにつながった。 - **規制**: 2018年頃まで、ブロックチェーンゲームのトークンが資金決済法上の暗号資産に該当しうるという解釈上の不透明さがあり、大企業が参入を躊躇する要因になっていた。この論点が「トークンはNFTであって暗号資産ではない」と整理される金融庁ガイドライン改正・パブリックコメント回答が出たのは2023年3月であり、ELF Mastersが参入した2022年9月時点ではこの整理は完了していなかった[出典: https://innovationlaw.jp/blockchain-games-under-japanese-laws-3/]。つまり日本の先行者は法的にグレーな時期に参入し、法整備が追いついた頃には世界的な市場崩壊が既に進行していた、という「規制の後追い」が起きている。 - **資本**: NFTキャラクター購入という高額な初期投資、独自ブロックチェーン(Palette)の開発・運用、海外プロジェクトとの提携交渉など、立ち上げに相応の資本を要するモデルであり、参入できたのはHashPort(暗号資産関連事業を持つグループ)のような専門プレイヤーに限られた。 - **インフラ**: 暗号資産の取引所・ウォレット・ガスレス処理などのインフラが、Ethereumベースの海外モデルをそのまま持ち込むには未成熟で、ELF Mastersが独自チェーンPaletteを採用したのもこのインフラ制約への対応だった。 - **需要成熟**: 日本には現金化を前提とするゲーム内経済(RMT: リアルマネートレード)に対する警戒感が業界慣行として根強く、Axieのように「本業より稼げる」水準の需要が発生する経済的必然性(新興国のような雇用逼迫)も存在しなかった。日本でのブームは投資・投機的関心が主導であり、生活手段としての実需に支えられた東南アジアとは需要構造が異なっていた。 ## 結果とその理由(成功/失敗/変形の中身) **世界側(発祥地)の崩壊**: Axie Infinityは2022年に入り急速に失速した。3月にはブリッジハック(Ronin Network)で約6億ドルが流出し[出典: https://restofworld.org/2022/axie-infinity-hack/]、SLPトークンは2021年5月の高値0.3645ドルから2022年2月には0.0094ドルまで下落、デイリーアクティブユーザーもピークの270万人から一時35万人程度まで約9割減少した[出典: https://blockworks.com/news/axie-infinity-active-users-nft-prices-continue-to-decline-after-bridge-reopening][出典: https://www.coindesk.com/tech/2022/02/08/axie-infinity-reduces-slp-emissions-to-prevent-collapse]。Terra Luna崩壊・FTX破綻など2022年後半のクリプトウィンター全体とも重なり、業界調査では2023年単年だけで3割超のWeb3ゲームプロジェクトが中止・停止し、GameFiプロジェクトの9割超が実質的に機能停止、300以上のゲームがサービス終了に追い込まれたと報告されている[出典: https://www.coindesk.com/markets/2026/04/23/more-than-90-of-web3-games-failed-after-usd15-billion-boom-as-gamers-never-showed-up-caladan]。 **日本側の結果**: ELF Mastersも同じ波に飲まれた。2023年3月、HashPalette(HashPort子会社)はELF Mastersを大型アップデートし、メタバース型ファーミングゲーム「THE LAND〜エルフの森〜」へ転換すると発表した[出典: https://news.blockchaingame.jp/2157]。これは実質的な路線転換(P2Eの稼ぐ性格を薄め、ファーミング/メタバース要素へシフト)だったが延命はできず、2024年4月30日18時をもって完全にサービス終了した(PLTトークン・NFTはウォレットへ返却または新ゲームへの移行対応)[出典: https://www.aoi-sns.com/entry/2024/04/29/201152]。同グループのHashGamesが手掛けた他タイトル「De:LitheΦ」も開発遅延によりNFT購入者への返金対応に追い込まれ[出典: https://bittimes.net/news/139732.html]、HashPaletteは2023年3月期決算で最終損失4億4900万円を計上した[出典: https://gamebiz.jp/news/372520]。最終的にHashPaletteはAptos Labsに株式売却され、独自チェーンPaletteはAptos Networkへ統合される形で事業を終えている[出典: https://web3.gamebusiness.jp/article/2024/10/03/729.html]。STEPNも2022年5月以降、新規流入の鈍化とともにGSTトークン価格が99%超下落し、ブームは1年未満で終息した[出典: https://diamond.jp/crypto/gamefi/stepn/]。 失敗の理由は、①新規参入者の資金が既存プレイヤーの報酬原資になるゼロサム構造(成長が止まると即座に破綻する)、②ゲームとしての面白さよりも投機的リターンが参加動機の中心だったため、トークン価格が下がると同時にプレイヤーが離脱する、という2点に集約される。これは発祥地・日本side問わず共通しており、「日本版だから起きた失敗」ではなく「モデル自体が内包していた構造的欠陥」がタイムラグなしにグローバルに同時発現した事例である。 ## ローカライズで変わった点 - ガス代のかからない独自ブロックチェーン「Palette」の採用など、Ethereumベースの海外モデルをそのまま輸入せず、参入障壁(ガス代・ウォレット操作の複雑さ)を下げる技術ローカライズが行われた。 - Axieの「スカラーシップ制度」(資金力のある保有者がNFTを貸し出し、プレイヤーが代理プレイして報酬を分配する仕組み)に相当する形として、日本では著名人主導のギルド(MZ CLUB)がコミュニティ動員の役割を担った。東南アジアでは「生活のための実需」が制度を支えたのに対し、日本では「インフルエンサーによる話題化・投機的関心」が主導した点が構造的に異なる。 - 稼ぐこと自体を前面に出す海外型のマーケティングに対し、日本版はファンタジーRPG的な世界観・美少女キャラクターNFTなど、既存の日本産ソーシャルゲーム文化に寄せた意匠でローカライズされていた(ELF Mastersのマスター/エルフNFT収集要素など)。ただしこれは表層的な変更にとどまり、根底の報酬経済構造(ゼロサム型トークン循環)は変えられなかった。 ## business-autopilot 的な学び - **観察**: 海外でモデルがマス市場化した年(origin_year)と、日本の所管当局による規制上の明確化が完了した年にズレがある場合、日本の先行者はグレーゾーンで短命の事業展開を強いられる(ELF Mastersは金融庁のNFT/暗号資産区分明確化(2023年3月)より半年早い2022年9月に参入し、明確化から1年強で撤退した)。→ **適用**: 規制関連業種のモデルを候補選定する際は、「日本の所管当局のガイドライン確定年」を japan_entry_year の妥当性チェック項目に加え、確定前の参入は outcome=failed/pending 方向にリスク補正する。 - **観察**: 「新規参入者の支払いが既存プレイヤーの報酬原資になる」ゼロサム的な循環構造を持つモデルは、成長が鈍化した瞬間に自己崩壊する。Axie・ELF Masters・STEPNはいずれも「新規流入減→トークン価格急落→離脱」という同一の崩壊曲線をたどった。→ **適用**: 候補モデルの収益源泉が「外部からの新規資金流入への依存度」で説明できる場合、その依存度が高いほど outcome=failed の可能性を高く見積もる評価軸として明示的にスコア化する。 - **観察**: 著名人(前澤友作氏)によるギルド動員は立ち上がりの速さ・メディア露出には寄与したが、モデル自体の経済破綻を防ぐ効果はなかった。→ **適用**: 「著名人・インフルエンサーの参入有無」は japan_entry_year(立ち上がりの早さ)の予測材料としては有効だが、outcome(定着するか)の予測材料としては切り分けて扱う。 - **観察**: プラットフォーム本体(ゲーム開発・独自チェーン運用)はcapital-heavyだが、個人が実際に参入できていた層は「スカラーシップ運用・ギルドマネジメント」という代理プレイ仲介レイヤーだった。これは本体の失敗後には収益機会ごと消滅する、寿命の短い周辺参入だった点にも注意が必要。→ **適用**: capital-heavyな本体モデルでも周辺にsolo-feasibleな参入機会が生まれるかは必ず確認するが、その周辺機会の寿命が本体モデルの寿命(ここでは約2年)に強く連動する場合は、その旨を「学び」に明記し過度に推奨しない。