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SaaS管理プラットフォーム(SMP/BetterCloud・Zylo→Josys・Admina)

knowledge/cases/2021-saas-management-platform-smp.md

frontmatter

このファイルの構造化フィールド

model name
SaaS管理プラットフォーム(SMP/BetterCloud・Zylo→Josys・Admina)
origin country
米国
origin year
2018
origin players
BetterCloud Zylo
japan entry year
2021
time lag years
3
japan players
メタップスクラウド(先行第1号) マネーフォワード Admina(旧IT管理クラウド・国内シェア1位) Josys(資金調達最大手・グローバル展開先行)
domain
saas
sub domain
SaaS管理プラットフォーム(SMP)/シャドーIT可視化・ID・ライセンス・退職者アクセス一元管理
era
2020-2025
delay factors
言語 商習慣 需要成熟 インフラ
outcome
transformed
entry barrier
capital-heavy
confidence
confirmed
verified
adversarial-20260716
sources
https://en.wikipedia.org/wiki/BetterCloud https://www.bettercloud.com/turns-10/ https://techcrunch.com/2019/02/05/bettercloud-can-now-manage-any-saas-application/ https://zylo.com/company/ https://medium.com/@BetterCloud/gartners-new-market-category-saas-management-platforms-smps-d7f0c708f443 https://www.gartner.com/en/documents/4022188 https://corp.moneyforward.com/news/release/service/20210827-mf-press-2/ https://corp.moneyforward.com/news/release/service/20211111-mf-press/ https://www.metaps.com/press/ja/596-metaps-20201116 https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20210330_181015.html https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05459/ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9 https://corp.raksul.com/news/press/230906josys_funding_seriesb/ https://boxil.jp/mag/a8784/ https://www.prnewswire.com/news-releases/bettercloud-recognized-in-gartners-market-guide-for-saas-management-platforms-300760505.html https://www.atpress.ne.jp/news/235013

本文

## 概要(何のモデルか) SaaS Management Platform(SMP)は、企業内で個別契約されて乱立する多数のSaaSアプリケーション・アカウント・ライセンス・支出を一元的に可視化し、契約管理・コスト最適化・ID発行/削除(オンボーディング・オフボーディング)・シャドーIT検知を自動化するBtoB管理ツールのカテゴリである。情報システム部門が「誰が・どのSaaSを・いくらで・何人分契約しているか」を横断的に把握できないという、SaaS個別契約(サブスクリプション型ボトムアップ導入)が普及したことで生まれた構造的な管理不全に対する解決策として登場した。 米国では BetterCloud が2011年11月にニューヨークで創業し、当初は Google Workspace(当時 G Suite)の管理に特化していたが、2016年12月に単一SaaS(Google)特化から複数SaaS横断管理へのピボットを完了した [出典: https://www.bettercloud.com/turns-10/]。同じく2016年に創業した Zylo は2017年にML(機械学習)ベースの検出エンジンを立ち上げ、SaaS支出の自動発見・分類を打ち出した [出典: https://zylo.com/company/]。この市場が正式なカテゴリとして認知されたのは、Gartner が2018年に「SaaS Management Platforms(SMP)」という名称を公式に定義し、"The SMP: A 'Single Pane of Glass'..." というホワイトペーパーおよび Market Guide を発表したタイミングである(前年の2017年は "Cloud Office Management Tools" という暫定名称だった)[出典: https://medium.com/@BetterCloud/gartners-new-market-category-saas-management-platforms-smps-d7f0c708f443] [出典: https://www.gartner.com/en/documents/4022188]。2019年2月には BetterCloud が「あらゆるSaaSアプリを管理できるようになった」と発表しており、単一ベンダー管理から汎用SMPへの脱皮が完了したことを示している [出典: https://techcrunch.com/2019/02/05/bettercloud-can-now-manage-any-saas-application/]。 以上から、モデルの原型自体は2011〜2016年に形成されたが、「マス市場としてカテゴリが本格化した年」としては、Gartnerによる公式カテゴリ命名とMarket Guide発表があった **2018年** を origin_year として採用する(2016年のBetterCloudピボット/Zylo創業は"モデル構造の確立"であり、まだアナリスト市場が公式カテゴリとして認知する前段階だったため)。 ## 日本上陸の経緯(誰が・いつ・どう持ち込んだか) 日本国内でこのモデルが立ち上がったのは2020年末〜2021年に集中している。 - **メタップスクラウド**(株式会社メタップス):2020年11月16日に招待制で先行提供を開始し、2021年3月30日に正式リリース。SaaS一元管理機能とIDaaS(シングルサインオン)機能を組み合わせた設計で、国内では最も早く動いたプレイヤーである [出典: https://www.metaps.com/press/ja/596-metaps-20201116] [出典: https://www.weeklybcn.com/journal/news/detail/20210330_181015.html]。日経クロステックの記事は「コロナ禍でSaaS導入し過ぎの悲鳴」を背景として紹介しており、コロナ禍のリモートワーク急拡大によるSaaS乱立が国内需要の引き金だったことが確認できる [出典: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05459/]。 - **マネーフォワード IT管理クラウド**(現・マネーフォワード Admina):2021年8月27日にβ版として提供開始、同年11月11日に正式提供開始 [出典: https://corp.moneyforward.com/news/release/service/20210827-mf-press-2/] [出典: https://corp.moneyforward.com/news/release/service/20211111-mf-press/]。2023年2月に「マネーフォワード Admina」へ名称変更。 - **Josys**:ラクスル社内の新規事業として2021年に立ち上げられ、2021年9月より「ITデバイス&SaaS統合管理クラウド」として提供開始、2022年2月1日に「ジョーシス株式会社」として分社化された [出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%82%B9] [出典: https://corp.raksul.com/news/press/230906josys_funding_seriesb/]。2023年9月には135億円のシリーズB調達(累計179億円)を実施し、北米・APAC 40カ国へ同時展開するなど、国内SMPの中で最大の資金調達規模を記録した [出典: https://corp.raksul.com/news/press/230906josys_funding_seriesb/]。 **先行者と最終的な勝者の区別**:最初にサービス化したのはメタップスクラウド(2020年末招待制/2021年3月正式)だが、2026年時点の国内シェア調査(1,813人対象)ではマネーフォワード Adminaが20.70%で1位、デクセコ11.60%、ジョーシス11.30%と続く構造になっている [出典: https://boxil.jp/mag/a8784/]。すなわち「日本語対応で最初に動いた」のはメタップスクラウドだが、「市場を制した」のはマネーフォワード Admina、「資金と海外展開で最大手になった」のはJosys、という三者三様の勝ち方をしている。 **japan_entry_year の採用理由**:最初の1社(メタップスクラウド)の上陸は2020年11月(招待制)〜2021年3月(正式)だが、市場全体が動いた転換点としては、メタップスクラウド・マネーフォワード IT管理クラウド・Josysの主要3社がいずれも2021年内(3月/8-11月/9月)にサービスを開始し、「国内SMP市場」というカテゴリが同時多発的に形成された年である2021年を japan_entry_year として採用した。 ## なぜ遅れたか(delay_factors の根拠) - **言語**:BetterCloudやZyloなど米国発の先行SMPが日本語UI・日本語サポートを提供していたことを示す一次情報は今回の調査では確認できなかった(公式サイト・比較記事とも英語圏向けの記述のみで、日本市場展開の言及自体が見当たらない)。これは「日本語非対応だったから使われなかった」という直接証拠ではなく、「そもそも日本市場に参入した形跡が乏しい」という状況証拠である点は正直に明記する。国内の比較記事・導入事例でも BetterCloud/Zylo が選択肢として挙がっているものは見つからなかった。 - **需要成熟**:国内でSaaS個別契約(ボトムアップSaaS導入)が管理不能なレベルまで乱立したのは、2020年以降のコロナ禍によるリモートワーク急拡大が引き金である。日経クロステックの記事は「コロナ禍で『SaaS導入し過ぎ』の悲鳴」を明確にメタップスクラウド立ち上げの背景としている [出典: https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/05459/]。米国では2016-2018年に同種の需要が先に成熟していたのに対し、日本ではリモートワークによるSaaS急増自体が2020年以降の現象であり、需要の立ち上がりそのものが2〜4年遅れた。 - **商習慣**:日本企業は情報システム部門による稟議・承認プロセスを経ずに部門ごとにSaaS契約するケースが多く、「シャドーIT」の可視化ニーズが顕在化するまでに時間を要した。2022年度SaaS利用実態調査では、SaaSを11個以上利用する企業が2年前比32.7%増という結果が出ており、乱立の自覚自体が2022年前後にようやく広がったことがうかがえる。 - **インフラ**:日本国内でのSSO/IDaaS基盤(Azure AD, Okta等)の普及・ID管理基盤の整備が米国に比べて後発だったこともSMP導入の前提条件を遅らせた一因と考えられるが、この点は定量的な出典を確認できておらず、確度は低い(issuesに記載)。 ## 結果とその理由(成功/失敗/変形の中身) 海外発のBetterCloud・Zyloそのものが日本市場でシェアを獲得したという証拠は見当たらず、代わりに国内資本のプレイヤー(メタップス、マネーフォワード、ラクスル発のJosys)が「SaaS+ID管理+デバイス管理」を統合した独自パッケージとして再構築し、市場を制した。これは単純な「海外モデルの模倣による定着(established)」ではなく、日本の商習慣(退職者アカウント削除の徹底、日本語での契約書・請求書管理、稟議フロー対応)に合わせて機能セットが作り変えられた **transformed** の事例と判断する。 とりわけJosysは「SaaS管理」だけでなく「ITデバイス(PC等)のライフサイクル管理・キッティング代行」まで一体化したBPaaS(Business Process as a Service)型に発展させており、これは米国のBetterCloud/Zyloが基本的にソフトウェア管理に特化しているのとは異なる、日本市場向けの独自進化と言える [出典: https://corp.raksul.com/news/press/230906josys_funding_seriesb/]。マネーフォワード Adminaも「SaaSの家計簿」という国内の会計ドメインに親和性の高いコンセプトを前面に出しており、マネーフォワード本体の口座連携・自動仕訳技術を転用する形でシャドーIT検知の精度を強みとしている。 2023年のJosysシリーズB(135億円)は国内SaaS管理カテゴリとしては大型の調達であり、市場が投資家からも本格的な成長カテゴリとして認識されたことを示す。一方でこのカテゴリは2026年時点でも「7強構造」(Josys/Admina/メタップスクラウド/dxeco/ワスレナイ/freee IT管理/ServiceNow)が定まりつつある段階であり、圧倒的な一人勝ちには至っていない [出典: https://boxil.jp/mag/a8784/]。 ## ローカライズで変わった点 - **ID管理・IDaaSとの統合**:メタップスクラウドはSaaS管理とIDaaS(シングルサインオン)を最初から一体化した設計で、単なる「見える化ツール」ではなく認証基盤としても機能する点が米国オリジナルのBetterCloud型(管理・自動化中心)と異なる。 - **デバイス管理との統合(Josys)**:PCなどの物理デバイスのライフサイクル管理・キッティング代行まで一体化し、情報システム部門のオペレーション全体をアウトソースする方向に拡張した。これは日本企業特有の「情シス人員が薄く、外部委託ニーズが強い」構造に対応したローカライズである。 - **退職者アカウント自動検出への強い訴求**:日本語プレスリリースはいずれも「退職者のIDを自動検出」を主要機能として強調しており、日本企業における入退社時のアカウント管理の煩雑さ(紙の申請書・稟議フロー経由)への対応が前面に出ている。 ## business-autopilot 的な学び - **観察**:このモデルは「海外で先にカテゴリが確立→日本語非対応のまま海外勢が放置→国内特有の需要(コロナ禍のSaaS急増、退職者アカウント管理、情シス人員不足)に合わせて国内資本が独自パッケージとして再構築し勝つ」という、典型的な"transformed"パターンをたどった。今後の候補選定では、海外で既にGartner等アナリストがカテゴリ名を与えている(=マス市場化した)BtoB管理系ツールで、日本語UI・日本の商習慣(稟議、退職者管理、電帳法等の規制対応)への適応が薄いものを優先的にスクリーニングする価値がある。 - **観察**:日本上陸のタイミングは「最初の1社」と「市場が動いた年」がズレる典型例だった(メタップスクラウド2020-21年が先行、市場全体の立ち上がりは2021年内の3社同時多発)。今後の候補選定でも、"最初にやった会社"だけを見て判断せず、複数プレイヤーが同年に相次いで参入したかどうかを転換点の指標にすべきである。 - **観察**:プラットフォーム本体(多数のSaaS連携API開発・ID管理基盤の構築)は明確に capital-heavy で、個人・中小の新規参入は難しい。ただし「SaaS管理の運用代行」「情シスアウトソーシング」「特定業種向けの契約棚卸しコンサルティング」「シャドーIT可視化の診断サービス」等、SMP本体を作らずにその周辺で稼ぐ smb-feasible な機会は存在する(実際、代理店・間接販売網を通じた展開の動きがメタップスクラウド側にも見られる)。今後の候補選定では、プラットフォーム自体がcapital-heavyでも、周辺の運用・導入支援レイヤーに個人〜小規模チームが入り込める余地がないかを必ず確認する。 - **観察**:このカテゴリは日本で「一強」が決まっておらず、2026年時点でも7社規模の乱立状態が続いている。BtoB SaaS管理系は米国でも同様に多数ベンダーが併存するカテゴリであり(BetterCloud/Zylo/Productiv/Torii/Blissfully等)、winner-take-allになりにくい構造的性質を持つ可能性がある。今後の候補選定では、「海外で単一勝者が出ていないカテゴリ」は日本上陸後も乱立が続く可能性が高いと仮定し、参入余地(複数社が並存できる)の判断材料に使える。 ## issues(調査上の留意点) - BetterCloud/Zyloが実際に日本語対応や日本市場向け展開を試みた形跡(または明示的に日本市場を避けた形跡)を示す一次情報は見つからなかった。「言語」を delay_factor とした根拠は、日本の比較記事・導入事例に両社が一切登場しないという状況証拠に基づくもので、確度は confirmed ではなく probable〜unverified に近い。 - origin_year は 2016年(BetterCloudピボット/Zylo創業)と2018年(Gartnerカテゴリ命名)の2候補があり、本ファイルでは「マス市場として本格化した年」の定義に沿って2018年を採用したが、2016年を採用する立場も妥当性があり、time_lag_years は2候補あることに留意(2018年採用で3年、2016年採用なら5年)。 - インフラ(SSO/IDaaS基盤の普及タイミング)を delay_factor に含めたが、これを裏付ける定量的な一次情報は確認できておらず、確度は低い。