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Roam(ノマド向けコリビング)

knowledge/cases/2017-roam-nomad-coliving.md

frontmatter

このファイルの構造化フィールド

model name
Roam(ノマド向けコリビング)
origin country
米国
origin year
2016
origin players
Roam(Bruno Haid/Janine Yorio/Dane Andrews創業)
japan entry year
2017
time lag years
1
japan players
Roam Tokyo(赤坂、Roam本体の直営)
domain
sharing
sub domain
ノマド・リモートワーカー向け国際会員制コリビング(住居+コワーキング+コミュニティのサブスク)
era
2015-2020
delay factors
資本 需要成熟
outcome
failed
entry barrier
capital-heavy
confidence
probable
verified
adversarial-20260718
sources
https://techcrunch.com/2016/03/17/a-global-experiment-in-co-living/ https://fortune.com/2016/05/03/this-startup-wants-your-next-office-to-be-a-boutique-hotel-in-bali/ https://abc7news.com/home/roam-wants-to-redefine-home-with-co-living-co-working-spaces/3421345/ https://www.tokyoweekender.com/2017/12/roam/ https://www.dwell.com/article/forget-coworkingthese-coliving-spaces-let-you-travel-the-world-for-dollar1800-a-month-222e89b6 https://www.roam.co/ https://www.roam.co/places/tokyo https://remoteworkeurope.eu/insights/best-coliving-platforms-europe-2026/ https://www.everythingcoliving.com/case-studies/roam https://www.crunchbase.com/organization/roam-co-living

本文

## 概要(何のモデルか) Roam は、月額(または年額)会員費を払うと世界各地の直営拠点を移動しながら暮らせる「ノマド向けコリビング(coliving)」の草分け企業。2015年に Bruno Haid・Janine Yorio・Dane Andrews が共同創業し、Haid はサンフランシスコの初期コリビング実験 20Mission の共同創業者でもあった [出典: https://techcrunch.com/2016/03/17/a-global-experiment-in-co-living/]。2016年5月にシード資金340万ドルを調達し(CRV 主導)、バリ島・マイアミを皮切りに、マドリード・ロンドン・ブエノスアイレスへと拠点を拡大する計画を公表した [出典: https://fortune.com/2016/05/03/this-startup-wants-your-next-office-to-be-a-boutique-hotel-in-bali/]。個室(専用バスルーム付き)・共用コワーキングスペース・審査制のコミュニティプログラムを組み合わせ、ホテル並みの建築デザインを前面に出した「プレミアム帯のコリビング」というポジショニングだった [出典: https://www.everythingcoliving.com/case-studies/roam]。ABC7(サンフランシスコ地元局)や NBC Bay Area も2016年時点で「オフィス通勤を捨ててコリビングで暮らす」という新しい働き方として報じており、この年に米国内でこの種のモデルへのメディア露出・資金供給がまとまって立ち上がったことから、origin_year は2016年とした [出典: https://abc7news.com/home/roam-wants-to-redefine-home-with-co-living-co-working-spaces/3421345/]。 ## 日本上陸の経緯(誰が・いつ・どう持ち込んだか) 日本進出は Roam 本体による直営拠点の開設という形で行われた(現地企業への技術供与やライセンス方式ではない)。東京拠点は港区赤坂9-2-13に開設され、2017年4月時点の海外メディア記事や、2017年12月の Tokyo Weekender のレビュー記事(「Roam は赤坂・渋谷・六本木の結節点に位置する」「個室20室、共用コワーキング、屋上あり」)で既に稼働中の施設として紹介されている [出典: https://www.tokyoweekender.com/2017/12/roam/]。日本の「ノマド向け国際コリビング」市場自体が Roam 一社の上陸によってはじめて実体化したため、先行者と市場転換点はいずれも Roam Tokyo の開設(2017年)であり、両者の区別は生じない。よって japan_entry_year は2017年を採用した。 ## なぜ遅れたか(delay_factors の根拠) - **資本**: 複数都市で建物を借り上げ、ホテル水準の内装・運営体制を敷くビジネスモデルは初期投資と運転資金の負担が大きく、シード資金(340万ドル)を得てから実際に国際展開(バリ→マイアミ→東京など)を軌道に乗せるまでに1年強を要している [出典: https://fortune.com/2016/05/03/this-startup-wants-your-next-office-to-be-a-boutique-hotel-in-bali/]。 - **需要成熟**: 「複数都市を移動しながら暮らす」ノマドワーカー層は2016〜2017年時点でまだニッチで、対象となる顧客(高所得のリモートワーク専門職)が東京を含む拠点候補都市で一定数確保できる状態になるまで時間がかかった。 ※言語・商習慣・規制・決済といった障壁は、直営の富裕層向けサービスであるため相対的に低く、本事例では該当しないと判断した。 ## 結果とその理由(成功/失敗/変形の中身) 結果は失敗(全世界的な撤退・ブランド消滅)。Roam 自身の公式サイトは自社の失敗理由を率直に総括しており、「物価の高い都市で建物を借り上げ、投機的な資本に支えられて赤字運営を続けるのは、長期的に見て良いビジネスではなかった("leasing buildings in exceedingly expensive cities...and running them at a loss backed by speculative capital is...not a good long-term business to be in")」と明言している [出典: https://www.roam.co/]。これは依頼文にある「高コスト都市で赤字が続き撤退」というヒントと一致する一次資料である。 サンフランシスコ・マイアミ・バリ(ウブド)・ロンドン・東京の各直営拠点は、いずれも Roam ブランドとしての運営を終了し、建物自体は Sonder(サンフランシスコ)・Selina(マイアミ)・Outpost(ウブド)・Collective(ロンドン)・OYO(東京)という別の宿泊/コリビング事業者に引き継がれた [出典: https://www.roam.co/]。東京拠点についても roam.co の現行ページ上で「Book via OYO (Tokyo)」という案内に置き換わっており、Roam Tokyo としての直営は終了している [出典: https://www.roam.co/places/tokyo]。 **年号についての留保**: 依頼文のヒントでは「2019〜2020年に全拠点閉鎖」とされているが、今回の調査で独立に確認できたのはこの通りではなかった。業界メディア(Remote Work Europe, 2026年時点の記事)は「Roam は2024年以降休眠状態("dormant since 2024")」「2026年時点でRoamブランドの物件は一つも予約できない」と述べており、コロナ禍(2020年前後)による打撃を経つつも、最終的な"全拠点閉鎖・休眠"の確定時期はむしろ2023〜2024年頃と読める記述だった [出典: https://remoteworkeurope.eu/insights/best-coliving-platforms-europe-2026/]。一方で、東京拠点が実際にいつ閉鎖・OYOへ移管されたかを直接示す一次報道(日本語・英語とも)は今回発見できなかった。したがって「高コスト都市での赤字による撤退」という因果関係自体は Roam 公式サイトの一次資料で確認できたが、正確な閉鎖年(2019〜2020年か、2023〜2024年か)は複数ソースで一致しておらず、確度は confirmed ではなく probable とした。 ## ローカライズで変わった点 東京拠点は Roam の他都市拠点(バリのヴィラ調デザイン、マイアミのダウンタウン高層など)と同様に「その土地らしい建築デザイン」を各拠点で作り込むという Roam 全体の方針の一環であり、赤坂という港区都心・国際ビジネス street(六本木・渋谷至近)を選んだこと自体が、東京における国際色の強い富裕層ノマド需要を意識したロケーション選定だったとみられる [出典: https://www.tokyoweekender.com/2017/12/roam/]。価格帯は1泊あたり数百ドル〜(サイトによって1泊700ドル程度、月額換算で1,800ドル程度という報道もある)と、他都市と同水準のプレミアム価格設定を維持しており、日本向けに大きく価格や商品構成を変えた形跡はない [出典: https://www.dwell.com/article/forget-coworkingthese-coliving-spaces-let-you-travel-the-world-for-dollar1800-a-month-222e89b6]。つまり「日本市場に合わせて変形させた」のではなく、グローバル標準仕様をそのまま持ち込み、そのまま(グローバルの失敗と運命を共にする形で)撤退した事例である。 ## business-autopilot 的な学び 1. **観察**: 「複数の物価が高い都市で不動産を直営で借り上げる」モデルは、会員数の拡大が損益分岐点に届く前に固定費(賃料・内装・現地スタッフ)が先行して積み上がる。Roam は自社サイトでこれを明確に失敗理由として認めている。→ **適用**: 海外発の「複数拠点・直営不動産型」モデル(コリビング、直営フィットネス、直営コワーキングの多拠点展開など)を輸入候補として評価する際は、初期に「稼働率◯%で単月黒字化する拠点数」の逆算を必ず要求し、それが達成困難な"物価の高い都市を最初から選ぶ"設計だった場合は高リスクと判定する。 2. **観察**: Roam の日本上陸は、現地パートナーやライセンス方式ではなく本体の直営一号店という形で行われた。市場を実際に動かした主体と最初の参入者が同一(Roam自身)であり、二番手・三番手が追随して市場が広がる前に本家自体が撤退した。→ **適用**: 「最初の1社=市場を動かした転換点」であるケースは、その1社の資金体力・本国側の経営判断に日本事業の存続が完全に依存する。この構造(直営単独進出・現地資本の関与なし)が見えたら、"日本での成功/失敗は日本市場の固有事情よりも本国側の全社判断で決まりやすい"と割り引いて評価する。 3. **観察**: このモデル自体(建物を借り上げて多拠点運営)は capital-heavy で個人・中小の参入余地はほぼない。一方で、コリビング/多拠点シェア型住居が抱える課題(コミュニティ運営、入退去オペレーション、清掃・稼働管理、会員のマッチング)は運用代行・SaaS・コンテンツ商材として周辺参入が可能な領域である。→ **適用**: この種の「箱もの直営」失敗事例を business-autopilot の候補選定に使う場合は、"箱そのもの"の再現ではなく、"箱の運営を楽にする周辺ツール・代行サービス"側に翻訳して評価する。 4. **観察**: 日本語・英語いずれの一次報道でも「Roam Tokyo が正確にいつ閉鎖したか」を明記した記事が見つからなかった。海外発ブランドが日本から静かに撤退する場合、プレスリリースやニュース記事を出さずに Web サイトの記載を書き換えるだけで撤退することが多い。→ **適用**: 撤退時期を"事例の重要な数値"として扱う場合は、企業公式サイトの現状記載(バナー・FAQ・地域ページの生死)を一次資料として確認し、ニュース記事が存在しないことを理由に撤退自体を過小評価しない。ただし年号は確度を落として明記する。